『軍用通信 1900~1940年:機材の歴史』第1巻
本書の出発点は、著者が以前作成した「創始期から1940年までのフランス軍用無線機材」に関する技術目録である。代表的な機器を選び、未公開のものも多い当時の写真や、収集家・博物館に受け継がれた現存品の写真を数多く添えて、その解説を補っている。さらに各無線機を当時の技術的背景と結び付け、進歩とその影響、未解決の技術的問題を明らかにする。
この冷静で技術的な分析は、機材を実際の運用状況に置き、その設計者や使用者に迫るための足掛かりとなる。残された証言は残念ながらごく少ないが、そこから道筋の一部をたどることができる。機材そのものを「読み解く」ことも、失われた手掛かりを補う助けとなる。たとえば戦車内のER 52の配置図からは、操縦手と弾薬庫の間に挟まれ、頭上には車長がいる無線手の過酷な状況が見えてくる。暑く、ほとんど視界が利かず、騒音は激しく、熱い油の臭いが立ち込める。そんな中でモールス信号を受信するだけでも至難の業であり、紙に書き取るのはなおさらだ。同様に、戦前の演習ではER 12が教範どおりに動くことを喜んでいた工兵も、1940年5月の実戦では「チッ」「トッ」という信号の扱いに苦しむ。こうして単なる「ボタンだらけの箱」から離れ、重要な手掛かりの多くが失われたと思っていた歴史の中へと入っていく。
当時の状況に身を置くことで、次の疑問もより深く理解できる。1914年、ある脱走兵によって、なぜフランスの無線電信は敵国に対して大きな先行を得られたのか。なぜ「モロッコ平定」作戦がエッフェル塔を破壊から救ったのか。そして長く論争の的となってきた問題として、第一次世界大戦後に「世界最高」と評されたフランスの無線機材は、1940年の敗走に責任があったのか、なかったのか。
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